5月 14 日に基本的対処方針が改正され、緊急事態措置を実施すべき区域の変更、そして緊急事態措置の対象外となった区域についても基本的な感染防止策の徹底等を継続する必要がある等の変更がなされました。
その結果、多くの関係団体では、専門家会議から公表された「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」や、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長から発出された「緊急事態措置の維持及び緩和等に関して」を踏まえた感染拡大予防ガイドラインの作成等に取り組まれていることと思います。
それぞれの地域の状況に応じて、即した取組が職場において実践されてください。

 まずは自社の就労形態や提供しているサービス形態に応じて、新型コロナウイルス感染症の主な感染経路である接触感染と飛沫感染について、従業員や顧客等の動線や接触等を考慮したリスク評価を行ってください。そして、そのリスクに応じた対策を検討してください。実際に事業場ごとのガイドライン等を作成する際は、感染管理/衛生管理にノウハウのある医師/産業医等に監修を求め、効果的な対策を行いましょう。
(産業医のいる企業さんはぜひ私たちをぜひ頼ってください!)


地域別の感染リスクに応じた対策の必要性

緊急事態措置の対象から外れる都道府県が出てくるに当たって、地域ごとの感染状況や、それに応じた対応を行うため各都道府県を3区分に分類されることになりました。それぞれの区分において想定される感染対策も発表されています。(政府専門家会議2020年5月14日)
企業においては、各拠点の所在地域に応じてリスク評価を行い感染対策や自粛緩和を考えていく必要があります。

①特定(警戒)都道府県 
法第 45 条に基づく「徹底した行動変容の要請」(8 割の接触機会の低減)により、新規感染者数を劇的に抑えこむ。
②感染拡大注意都道府県
感染状況をモニタリングしながら、「新しい生活様式」を徹底
必要に応じ、知事が法第 24 条第 9 項の協力要請(施設の使用やイベントの実施制限や感染対策への協力依頼等)等を実施する
③感染観察都道府県
引き続き感染状況をモニタリングしながら、「新しい生活様式」を継続し感染拡大を防ぐ。感染観察都道府県同士をまたぐ移動や、比較的小規模なイベントの開催が可能になる。(身体的距離の確保等の基本的な感染対策は前提)

個人の対策

個人の感染対策としては
①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗いをはじめとする「新しい生活様式」の実践とともに、「3つの密」の回避を中心とした行動変容を継続してください。(詳しくは当事務所の記事「感染予防のための新しいライフスタイル」)

各職場における感染リスクの評価

<接触感染のリスク評価>
他者と共有する物品や手が触れる場所と頻度を確認して、特定しましょう。
●高頻度接触部位
テーブル、椅子の背もたれ、ドアノブ、電気のスイッチ、電話、キーボード、タブレット、タッチパネル、レジ、蛇口、手すり・つり革、エレベーターのボタンなどに注意。

<飛沫感染のリスク評価>
職場内のスペースを特に以下の点を評価してください。
●換気の状況
●人と人との距離がどの程度維持できるか
●施設内で大声などを出す場がどこにあるか


各職場に共通する留意点

基本的には、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく感染拡大防止策を徹底することが重要です。
●人との接触を避け、対人距離を確保(できるだけ2mを目安に)する
● 感染防止のための入場者の整理(密にならない。発熱や感冒様症状を呈している者の出社や訪問を制限をする)
●入口及び施設内に、手指の消毒設備の設置
●マスクの着用(従業員及び訪問者に対して周知)
●施設の換気(1時間2回以上、2つの窓を同時に開けるなど)
●施設の消毒(高頻度接触部位を中心に)

<水際対策>
● 発熱や軽度であっても咳・咽頭痛などの感冒様症状がある人は出社しないよう呼びかける。顧客等にも同様に訪問しないように呼びかける
●非接触型の体温計などで発熱者を特定し出社や訪問を制限する
●業種によっては、万が一感染が発生した場合に備え、個人情報の取扱に十分注意しながら、訪問者等の名簿を適正に管理する。

<職場内の主な感染対策>
・引き続きテレワークを推奨しと出社を使い分ける。
・通勤は時差通勤や、徒歩・自転車通勤も検討する。
・会議は可能な範囲でオンラインを活用する
・ 他人と共用する物品や手が頻回に触れる箇所を工夫して最小限化する。
・複数の人の手が触れる場所を適宜消毒する。
・手や口が触れるようなもの(コップ、箸など)は、適切に洗浄消毒する。
・人と人が対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する。
・ユニフォームや衣服はこまめに洗濯する。
・休日や休暇の分散(社会全体での密を防止)
・手洗いや手指消毒の徹底を図る。
※ 美容院や理容、マッサージなどで顧客の体に触れる場合は、手洗いをよりこまめにするなどにより接触感染対策を強化する。(手袋は医療機関でなければ特に必要はなく、こまめな手洗いを主とする。)

<トイレ>  ※感染リスクが比較的高い
● 便器内は、通常の清掃で良い。
● 不特定多数が接触する場所は、清拭消毒を行う。
●トイレの蓋を閉めて汚物を流すよう表示する。
●ペーパータオルを設置するか、個人用にタオルを準備する。
● ハンドドライヤーは止め、共通のタオルは禁止する。

<休憩スペース> ※感染リスクが比較的高い
・ 一度に利用する人数に制限を設けたり、利用時間を分散させる。
・対面で食事や会話をしないようにする。
・休憩スペースは、常時換気することに努める。
・共有する物品(テーブル、いす等)は、定期的に消毒する。
・入退室の前後に手洗いをする。

<ゴミの廃棄>
・ 鼻水、唾液などが付いたごみは、共用のゴミ箱へ捨てる前に、各自でビニール袋等に入れて密閉して縛る。
・ ゴミを回収する人は、マスクや手袋を着用する。
・ マスクや手袋を脱いだ後は、必ず石鹸と流水で手を洗う。

<清掃・消毒>
・ 市販されている界面活性剤含有の洗浄剤や漂白剤を用いて清掃する。通常の清掃に加えて、不特定多数が触れる環境表面を、始業前、始業後に清拭消毒することが重要。手が触れることがない床や壁は、通常の清掃で良い。

<出張・移動>
各拠点の感染状況(都道府県の3つの分類)を、出張の重要度とあわせて確認ししてください。
感染観察都道府県同士であれば原則可能。
出発地あるいは目的地が、特定(警戒)都道府県/感染拡大注意都道府県の場合は不要不急の移動は避ける。

<催し物(イベント)> ※感染リスクが比較的高い
感染観察都道府県では以下のことに注意して開催可能
(感染拡大注意都道府県では、クラスターのおそれがあるイベントは自粛。それ以外は感染対策の徹底が条件)
・3つの密(密閉・密集・密接)を徹底回避
  人と人との間隔2mを目安
  比較的少人数で行う。最大人数100人以下
  収容人数の50%以下を目安
・近距離での会話は避ける
  大声での発声、歌唱や声援、近接での会話は避ける
・適切な感染防止対策
  入場時の制限や誘導、手指の消毒設備設置、マスク着用、室内換気

<その他>
・ 高齢者や持病のある方については、感染した場合の重症化リスクが高いことから、より慎重で徹底した対応を検討する。
・ 地域での感染拡大の可能性が報告された場合の対応について検討をしておく。感染拡大リスクが残る場合には、対応を強化することが必要となる可能性がある。

※ 業種ごとに対応を検討する場合、これまでにクラスターが発生している施設と類似の環境の場合には、格段の留意が必要。

《参照》
・緊急事態措置の維持及び緩和等に関して(内閣官房 事務連絡 2020年5月4日)
https://corona.go.jp/news/pdf/kinkyujitai_iji_kanwa_0504.pdf
・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」2020 年 5 月 11 日一部訂正
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf
・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」2020 年 5 月 14 日
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000630600.pdf
・職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について(厚労省労働基準局長2020年5月14日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000630690.pdf